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夜半に耽美のことを

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深緑夜のテーブルに胡桃裂け 澁澤龍彦。 彼を知ったのは10代後半のこと。 耽美であった。 中世の闇、絵画の恍惚、心に巣食う怪物。 すべては美に還元され、 若き心に楔を打っていた。  自身のサディズムを知ってからは、 おそらくは僕にとって理性の象徴である。 どれほどのエロス(生)を纏わせていても 理性を通過させなくてはならない。 美とは形式なのだ。 美には独自の掟が必要なのである。 放蕩には意思がなくてはならない。

境界

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フッサールは『事象そのもの』へ向かうことを唱えた。 自身と自身以外との関係、主観と客観の信憑性。 わたしはあなたをみる。 あなたはわたしをみる。 わたしは鞭を打ち、 あなたは鞭に身体を預ける。 だがわたしはあなたの痛みを感じ、 あなたはわたしの喜びを知り昂る。 いったい僕たちの身体の境界は 何処にあるのだろう? 光はあなたを照らす。 闇はあなたを癒す。 ーsayokoー

黒髪の夜

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  夜干玉之 吾黒髪乎 引奴良思 乱而反 戀度鴨 ぬばたまし吾が黒髪を引きぬらし乱れてさらに恋ひわたるかも 『万葉集』集歌二六一〇 -Kaori-

薔薇の夜、或いは愛奴という名

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  聖なる夜薔薇の白なれば赦されず ヘーゲルの著した現象学。 人間のありようとして常に精神(Geist)が 充足しない”欲望の過剰”だという。 それは死の匂いすら漂う 危険なものでしか満たされない。 嗚呼、他者と自身との葛藤に苛まされ 親愛の好虐者にこそ肢体を拘束さる 鞭に肌を晒し尚も蹂躙されることで自身の生が 完結に至る愛しき者を「愛奴」という。 薔薇の如く愛される汝のことを書き留めん。

香水-夏三句

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  茉莉花や此処でいいと泣きて伏す よろこびはほとばしりて香水醸す 雨後射して日傘ゆれるゆるやかな

山の精

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  ひとにしられぬ たのしみの ふかきはやしを たれかしる ひとにしられぬ はるのひの かすみのおくを たれかしる 『山精』 -藤村藤村ー -kaori-