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冬の候

写真と法悦-サイ・トォンブリィ

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  生殖を未だもてあます山女かな 美術家サイ・トォンブリィ。 美しい写真を残した晩年は幸せだったのだろうか。 日常の輪郭がぼやけ、ズレて、色の溢れる世界。 チューリップ、絵具や筆、海岸、彫刻。 眩暈の視線。 あらゆるものが恐ろしい法悦に溺れている。 Cy Twombly、1928.4.25 - 2011.7.5

冬籠り

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  肌白や朱のひとすじ冬ごもり 冬は突然にやってきてあなたの膚色を これほどでもなく白色へ向かわせる。 嬉しさは小さき革鞭が ゆくりとあなた柔らかき部位を 舐め廻すことなり。 幾つもの朱のつらなりが美しくて。 紅き唇の吐息欲しくて、 深く々々、鞭を振りおろしてゆく。 -kaori-

崇高と美と

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つまり、 われわれが愛と呼ぶ この混合した情念の対象は 『性』がもつ『美』なのである。 『崇高と美の起源』-エドマンド・バーグ- ーsayokoー

セザンヌの夜

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  からすうり静物と霧と深淵 山間の美術館で再会したセザンヌ。 清廉とした静物画に立ち止まる。 なぜか、夜を想う。 秋の不順な気候、曇天の空がそう思わせるか。 瑞々しい果物、白磁の硬質。光を面として輝くのに。 彼は夜の画家であったかもしれない。 どれほど鮮やかな色彩で描かれたモティーフであっても。 筆触の残る画面の外側から、 ゆるりゆるりと黒が忍び寄ってくる。

日記

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  こうして私がひとりいるときこそ、 花々はほんとうに見られている。 心を注いでやれる。 存在するものとして感じられる。 花なしに私は生きられないと思う。 『独り居の日記』 ーメイ・サートンー -kaori-

アート・オブ・フーガ

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秋風のやや肌寒く吹くなへに荻の上葉の音ぞかなしき 『新古今和歌集』 巻第四 秋歌上433番 バッハはフーガである。 フーガ(対位法)なる世界の構築。 幾重にもときを経て重なる主題が 韻を踏んでゆく。 タントラの如く揺れうごく。 音の重ね衣は秋のせつなき歌に似る。

憂愁ー秋三句

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秋の日や優しく靴を揃えおき 秋薔薇や背より触る雨音激し 夜待ちて甘口なる秋食む