薔薇の名

 


薔薇はまづ名としてあらはれ
概念が空想をそそり
そそれられた空想が実体に触れ、
その匂ひ、その色、その形が
記憶へ蓄へられる。
あるひは名も知れずにみた
花の美しさが心に沁み、
認識慾が起こり、
その名を薔薇と知つて
自分の概念世界に
組み込むにいたる。

『暁の寺』 -三島由紀夫-


ーayakaー

このブログの人気の投稿

形而上学

榠櫨の実

愉悦