愉悦


レッスンの行方は日頃いづくへ向かふや知らず、
唯、知れるのはいつか二人の心身が、
どこかでひそやかに行合ふことの
あるらしきことばかりなり。

その到達点へ至るまでの長き道程において、
わたくしは、道具や言の葉を弄び、
その麗しき部位に責めの囁きを与ふる。
嬌声と懇願、浅ましくも濡れたる身體は、
指先、舌先、道具の先に応答し、
天上へ及ぶか及ばぬかの微妙な高みを、
果てしなく反復しつつ、愉しむのである。

時はゆるやかに螺旋を描き、
空間は現実と幻想のあはひに揺れ、
身体の震え、呼吸の微かな余韻、
そして囁かれた言葉の残響までもが、
甘美な苦楽の旋律として静かに永遠を刻む。

ここに在るのは唯官能のみならず、
精神と感覚とが交錯し
浅ましさと純粋なる歓びとが溶け合ふ、
ひそやかな聖域――
到達を待たぬままに
繰り返される悦楽の儀式である。

陽の短きは哀し。

photo:kaori


コメント

メッセージフォーム

名前

メール *

メッセージ *