春の部屋にてー供儀
幸福が徳のうちにあるというのは
根拠のない空論にすぎない。
幸福を規定するのは各人が自身の裡に抱く
果てしない情欲である
――マルキ・ド・サド
*
ーあなたが足元へ跪く―
その肌に刻まれる痛みは単なる苦痛ではない。
自然が私たちに授けた最も鮮烈な生命の証。
文明という硬質な衣を脱ぎ捨てた魂が哭く。
ー鞭が撓り愛おしくも哀しき嬌声ー
支配する者の冷徹な眼差しと
服従する者の熱い吐息が交差する瞬間
二人の間には絶対的な「個」の境界が消失し
破壊的な美が立ち現れる。
ー美しき丘陵を愛撫しながらー
加虐と被虐という供儀によって
私たちは理性の牢獄から解放され
悦びに彩られた耽美な深淵へと沈んでゆく。
残酷な非対称性の中にこそ
修羅と慈悲に満たされた世界がある。
-nao-
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