世界でいちばん安全な場所

 
安全な場所というものを、
外の世界に探そうとすると、
どうにも心許ない。
鍵のかかった部屋も、
見慣れた風景も、
いつまでも同じ姿でこちらを
待っていてくれるわけではない。
人も場所も時間のなかで少しずつ変わっていく。

帰る場所はどこにあるのだろう。

ふと、自分の心のことを思う。
そこには忘れたつもりの記憶や、
誰にも話さなかった悲しみ、
少しばかり厄介な欲望などが、
古い書物の頁に挟まれた栞のように残っている。
決して居心地のよいばかりの場所ではない。
それでもそこにあるものを追い出さず、
そのまま受け入れてやることはできる。

自分の心を愛するというのは、
欠点をなくすことではなく、
好きになれない自分からも
立ち去らないことなのだろう。

世界のどこにも永遠に安全な場所などない。
だからこそ自分の内側にある小さな場所を慈しみたい。


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