稜線ー午後の憂鬱
光に満ちた昼下がりがなぜこれほど気怠いのか。
わたしは着衣無き美しい生き物の稜線をみる。
啼くような吐息に呼応するように
しかし確かに波打つその輪郭。
視線は吸い寄せられている。
外界は日常という反復を飽きもせず続けている。
昼光は西へ向かうほど肌を朱へ染めていく。
私は椅子から立ち上がり
唯々鞭でその稜線に触れてゆく。
合図なのだ。
――ふたたび、嬌声の時間がはじまる。
もし誰かが窃視することがあるなら
カーテン越しの淡い光のなかで
美しい生き物が揺れているのを見るだろう。
赦しを乞う声とそれでもなお求めている欲望とが、
重なり離れふたたび重なる。
午後特有の気怠さは
やがて嬌声に溶かされかき消されていく。
代わりに部屋を満たすのは欲望の薫りである。
それは窓を閉ざしても逃げ場を失わず
光のなかにゆっくりと拡散していく。
昼下がりそのものが
密やかな秘密を抱え込んだまま
なお明るさを装っているかのように。
ーnaoー

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