芳醇な夢


『単語集』ー金井美恵子ー


小説ないしは小説家を
禍々しいものとそうでないものを
あえて分別するのであれば前者であるのだ。
『単語集』はひとりの独白で綴られる。
主人公は曖昧な存在だ。
彼の肉体はその文章からはみつからない。
纏わりつく二元論的現実が世界としてあるのみ。
そして日常とは小さな恐怖とわずかな愉悦で
創られてゆく悪しき芳醇なワインである。




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