荒海やー美しき鋼の波

荒海や佐渡によこたふ天の川 
-松尾芭蕉-

言葉のまま、ありきたりと感じながらも
此れがいちばんに浮かぶ詩歌。
門坂流はエングレービングの力により
過剰なまでの流量を作品に持ち込んでいる。

芭蕉はうねる北の島の海を星空の川の流れと
二重露出させて描く世界の流量を表したのだ。

言葉と作品はさらに精神の内側で
恐ろしい波をくねらせている。

20代で門坂氏を知っていたが、
まだこの作品のうねり、
美しさを受けとめる土壌にはなかった。
此処で再会したことは運命であったか
偶然のなせることなのか。

美術館を去れば、夏の酷い暑さに
荒海のごとく眩暈を覚えながら
立ち尽くすのみなのだ。

『荒波』門坂流
1948-2014 版画家

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