薔薇の夜、或いは愛奴という名

 


聖なる夜薔薇の白なれば赦されず

ヘーゲルの著した現象学――
それは、人間のありようを精神(Geist)の
永遠の欠如として描き、
常に充たされぬ「欲望の過剰」の響きを告げる。
その過剰は死の匂いすら帯びた危うさを孕み、
平凡な満足では決して静まることのない、
ひそやかな災厄である。

嗚呼、他者と自身との果てしない葛藤に苛まれ、
その内奥で親愛の好虐者に肢体を委ねる者は、
鞭の冷たさに肌を曝し
蹂躙される悦びに身を震わせながら、
はじめて自身の生の輪郭を鋭く鮮やかに知覚する。
この生の完結の瞬間を
彼らは「愛奴」と呼ぶのである。

私は今、薔薇のように愛される汝のことを、
その微細な痛みと官能の残響ごと書き留めたい。
鞭の響きも、吐息も、甘美な沈黙も。
愛の中でしか結晶し得ぬ永遠の香気として。


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