春の宵

きっと、
あなたは思ってもいなかったのだろう。
あの美しい花の蕾がふいにひらくとき、
あまりに静かで
あまりに残酷な痛みが
指先の尖端をかすめるように訪れるなんて。

泣きじゃくるほどの辛さのなかで、
小さな倒錯の死をいくつも拾い上げ、
それでもまた息をしてしまう自分を
どこか他人事のように眺めていればいい。

春はまだ
はじまりの呼吸をしているだけなのだから。

photo:mayu

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