夜とスパンキング




夜は海の匂いがする。


月明かりのなかでその輪郭だけが
静かに浮かんでいる。
肩、背中、髪。
夜になるとそれはひどく遠い。

僕はその身体を眺める。

所有するためではなく
まだ知らないものを見るように。

スパンキングすること。

それは行為の名前というより
二人のあいだに置かれた小さな月のようだ。

柔らかな隠された部位に
傷痕が震える。

ああ、海の匂いがする。

*

近づけば消え離れれば輪郭を持つ。

その身体には言葉のない場所がある。

触れればわかるものでもなく
尋ねれば答えてくれるものでもない。
唯、その人だけが知っている
夜の奥の部屋。

その身体のどこもかしこも
欲望に埋め尽くされる。

いいかい、
恥ずべきことなのだよ。


*


そこへ近づくには
力よりも静けさが必要なのだ。

僕は手を伸ばす。

スパンキングしなければ。

身体は求めるだろう
誰も知らぬ歓びを。

二人のあいだにある沈黙を
ほんの少し揺らす快楽。

海の匂いは何処からだろう。


*


朝になれば
あなたは清浄になり
月は昼間の月になる。

それでも

あの身体を見つめた時間だけは
どこか夜の側に残っている。

まるでまだ名前のない夢のように。

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